第5回 自分に合ったHRTを選ぶ

初出:ラブピースクラブ 2016年5月4日

 

しかし、錠剤のほかにも摂取する方法があり、体質やライフスタイルに合わせて適したものが選べるのです。去る424日(日)、ラブピースクラブにて『膣ダイレーター相談外来』というワークショップが開かれ、産婦人科医師の早乙女智子先生に貴重なお話を伺うことができました。

早乙女先生のコラムのタイトルは『ラブ&ボディ 自分のからだの専門家でいよう』ですが、この日もまさに、

 

「自分の身体について、まだまだ知らないことがあった!」

 

と、56歳の私にとっても驚きの一日でした。

ダイレーターは性交痛や膣閉鎖に悩む女性のための、膣拡張を助けてくれる器具ですが、女性の体について総合的にいろいろなお話があり、その中でホルモン補充療法(HRT)についても教えていただきました。

 

前回のコラムで、私はエストリオールというエストロゲンの錠剤を9ヶ月処方してもらっていたこと、私は子宮全摘していますが子宮がある人の場合は併せて黄体ホルモンも服用することを書きました。

 

 

l  飲むタイプ……通常一日一回、錠剤を服用します。

l  貼るタイプ……下腹部などにパッチを貼り、皮膚から吸収させます。二日に一度、貼り替えます。

l  塗るタイプ……ゲルを一日一回、皮膚に塗ります。薬剤によって、塗る部位が指定されています。

l  膣に入れるタイプ……錠剤を一日一回、膣の奥の方に入れます。

 

毎日一回お薬を服用するというのは、健康な時に考えると面倒くさいと感じますが、実際に更年期障害に悩まされてみると、

 

「たった一日一度のケアで、あの苦しさから解放された……!」

 

と、うれしく感じるばかりでした。

肝臓に負担をかけたくない人には、パッチやゲルが有効だと思います。

パッチを貼るほうが手軽ですが、皮膚がかぶれやすい人にはゲルが好評のようです。

また、膣錠は膣の潤いが不足している時によく効くそうで、私も使ってみたいと思っています。

 

更年期の膣の潤い不足は、セックスの時に挿入が辛いだけではなく、膣が乾燥&萎縮してもろく傷つきやすくなり、細菌に感染しやすくなります。

本当に、いやになるぐらい膣炎にかかりやすくなりました。

それがイヤで何年もセックスをしなくなり、膣が萎縮して指も入らない状態になってしまうことがあるそうです。

 

「もう年だからエッチは卒業」

「子供を産んだら、しなくてもいいと思うようになった」

 

と言う人も少なくないのですが、性器や性器まわりの筋肉の健康を考えると、たとえ月に一回でもセックスがあれば萎縮を防げるそうですし、パートナーがいない場合もダイレーターやバイブレーターで代用してもいいのではないでしょうか。

昔とは違い、女性にとって使いやすく快感を得やすいオナニーグッズがたくさん販売されていますから、私もいろいろ試して楽しんでいます。

 

最近、ネットの記事で見かけたのですが、若い女性は膣内が濡れるまでに10~30秒しかかからないのに、更年期年齢の女性は1~3分、すなわち6倍もかかるというのです。

データはわかりませんが、確かに自分の実感としてはそんな感じがします。

若い時は、事が始まる前から濡れていて恥ずかしい、ということを経験する女性も多いと思いますが、更年期になると、思ったほど濡れていなくて申しわけない、ということがあります。

気分は盛り上がっているのに、パンティを脱がされてみたら「あ、ちょっとお待ちを」という、笑うに笑えない事態です。

そこで無理をして挿入すると、膣が切れて出血したり、膣炎になったりしますので、潤滑ローションを使うことも重要です。

 

私は今、自分自身の更年期障害と閉経の体験から書いていますが、女性ホルモンが低下したり、ホルモンバランスが崩れたりすると、同じようなことが起きる可能性があります。

ホルモンがつかさどる女性の健康はとても繊細です。

年齢に関係なく、女性ホルモンについて知っていただきたいな、と思います。

 

男性から見ると、バイブレーターやローションは「エッチを高めるためのエログッズ」でしかないのかも知れませんが、女性にとっては性の健康を維持するためのサポートグッズでもあるのです。

欧米に比べると日本ではまだまだ、アダルトグッズ=「いやらしい人が使うもの」という認識がはびこっているような気もします。

身体の各部位に健康があるのですから、性器の健康ということにも、今後は関心が寄せられていくと思いますし、早くそうなってほしいですね。

 

さて、お話をHRTに戻します。

症状がほとんどなくなり、エストリオール錠をやめてからも、二度ほどホルモンバランスが狂って精神的に不安定なときがありました。

そのときは漢方薬を処方してもらいました。

 

l  漢方薬……当帰(とうき)芍薬散(しゃくやくさん)加味(かみ)逍遥散(しょうようさん)桂枝茯苓(けいしぶくりょう)(がん)など。

 

効果があらわれるまでに、やや時間がかかりますが、私の場合はしっかり効きめがあり、何かと焦りだすと止まらなかったのが、穏やかな気分でいられるようになりました。

しかし、これはご存知の方も多いと思いますが、漢方は西洋医学の薬とはまた別の考え方に沿って処方されるものであり、症状を止めるよりは体質を改善して、体全体としての治癒力を高めるように薬を決めていきます。

実は私も、一度は合う薬が出たのに、別の病院で真逆の漢方が出されて、そちらは全然効きませんでした。

私の場合は焦って感情が亢進することが問題だったのに、落ち込みがちな気分が活発になる漢方を処方されてしまい、あまり効かなかったのです。

 

また、漢方薬には副作用が少ないと考えられがちですが、絶対にないわけではないので、市販の漢方を自己判断で買って次々と試すようなことは、やめたほうがいいでしょう。

生薬は自然に近い薬ですが、使い方が不自然であったり過剰であったりすれば、決していいことばかりではないのです。

 

自然ということを考えれば、薬に頼らず食品から摂取するという考えがあります。

大豆や(くず)にふくまれているイソフラボンは、ストロゲンに似た働きをすると言われ、納豆などを積極的に食べている人も多いと思います。

イソフラボンの中のダイゼインという物質が、腸内細菌によって「エクオール」として代謝されるのですが、このエクオールがエストロゲンのように作用してくれる、というのです。

 

しかし、現代の日本人女性では二人に一人しか、このエクオールが作れないそうです。

そこで、健康食品という選択肢もあります。

 

l  健康食品……「エクエル」(エクオール含有大豆胚芽乳酸菌発酵物加工食品)

 

私は試していないのですが、友人で飲んだ人がいたので聞いてみたところ、

 

「効き目は薬よりはゆっくりだったけど、効果はあったよ。ただ、一ヶ月で四千円以上かかっちゃうので、病院で薬をもらったほうが安いのよね」

 

とのことでした。

健康食品なので健康保険適用外ですから、これは仕方ないですね。

 

以上、女性ホルモン量低下に対する対策をHRTとそれ以外もふくめ、いろいろ挙げてみました。

 

更年期障害だけでなく、月経前症候群(PMS)や生理不順にもHRTは有効です。