第6回 更年期障害と性交痛
初出:ラブピースクラブ 2016年6月2日
そう言えば、前回ふれた膣ダイレーターですが、ラブピースクラブで見たダイレーターは、カラフルで可愛かったのです。
女性が心理的な抵抗なく手に取れるカラーだということ、とても大切だと思うのです。
ダイレーターが性交痛に悩む女性のためのヘルスケアグッズであることを考えると、ダイレーターを手にするまでにさまざまな悩みがあり、その多くは人に言えないことで、息苦しさがあったはず。
いかにも、「私は医療器具ですから! お洒落とか縁がありませんから!」という顔をしている、ニョロニョロみたいな白いやつよりは、少し気持ちがリラックスするんじゃないかしら、と思ったのです。
女性にとって、産婦人科で診察を受けることはなかなか気分の重いことだったりします。
医療器具のカラーが明るくなるだけで、その抵抗感はずいぶん薄れるでしょう。
内診台だって、一昔前までは今のようなソフトなカラーではありませんでした。
産婦人科を訪れる女性の事情もさまざまですから、少しでも精神的な負担が軽くなるような環境になってきているのは、若い人たちのためにうれしく思います。
「早く病院に行けばよかった」という後悔だけは、なくなってほしいです。
さて、私が最近気になっていることは、性交痛に悩む女性はこんなに多いのか・・・ ということです。
思えばまだ学生の頃、彼氏と何回もセックスしているのに、そのたびにアソコが痛い・・・ と悩んでいる友達がいました。
バージンでなくなってから半年経っても、まだ痛いと言っていた彼女、その後どうしたでしょうか。
半年どころか、結婚して何年にもなるのに、まだ痛いと言う女性もいます。
結婚はしたものの彼のペニスが大きくて、痛い、と。
この方は、自慢みたいに思われたり、笑われたりするので友人にも話せない、と悩んでいました。
産後は産後で、セックスを再開したものの、痛くてつらいという人が結構います。
多くは心理的に強いストレスを感じて、濡れていないのに挿入されてしまうのが原因のようです。
産後の女性は無意識にいろいろなことを考えて、セックスに没頭しづらくなっています。
「産前に比べて、ゆるくなっているんじゃないだろうか?」
「パチパチ切っていたところは、どうなっているんだろう?」
まだ出産の傷が治っていないのではないか、と考えると、怖くなって、セックスを楽しむどころではなくなってしまうのです。
そして閉経期の今、私自身が性交痛に悩んでいます。
「性交すると性器が痛い」という悩みは、年代に関わらず、多くの女性が経験する悩みなんですね。
その原因はさまざまですが、この悩みって、どうも男性には理解しがたいみたいなのです。
「だって、すごい感じてた日もあるじゃん? なんで今日は痛いって言うの?」
「そんなにアソコがきついわけでもないのに、痛いってどういうこと?」
なんて言われると女性は傷つきますし、
「あっ、そう。俺のチ○ポが良くないってことね?」
と逆ギレされるのとか、ホントーに困るんです。
こっちは大まじめで悩んでいるんですから……。
更年期の性交痛について言えば、痛い原因は大きく分けて二つありそうです。
① 女性ホルモンの減少により、膣内の潤いが失われている
② 長期間、性交をしなかったために廃用萎縮が起こっている
もちろん個人差はあると思いますが、私自身は排卵が止まった50歳から急激に膣が濡れにくくなりました。
それまでは、どちらかと言えば濡れやすいほう……と言えば聞こえは良いですが、やたら濡れすぎるのもどんなもんだろう、ムダだろう、ということがありました。
いざ挿入しようとしたときに、濡れすぎていて、勢いよく突き立てようとしたペニスが、
「ズルルルルルーーーーーーーッ!」
と滑ってクリトリスあたりに激突し、お互いに痛い思いをすると、しばしムードが冷めちゃうんですよね。
お化粧して、きれいな下着をつけて、おしゃれして、今日はデート。
最後にトイレに行ったら、ガガーン!!
パンツがもうベトベト~!……なんていうのも若い頃ならでは。
それが、今では濡れない。
いつもカラッとしている。
いや、今いいムードなのにカラッとしている……誰か拭いたの?って思うほどカラッカラじゃん!
10~20代のときは、気持ちよさがわからなかったから、濡れていないことがあります。
つまり興奮不足。
脳が興奮していないから、濡れない。
初めてのセックスのとき、これで苦労した人は少なくないのでは?
ところが、更年期の濡れてない状態は、まず自分がビックリしちゃいます。
だって、ちゃんと気持ちよくなっていて、クリトリスなんかズキンズキン脈を打つぐらい興奮しているのに、膣だって「入れてほしいな」と歓迎ムードいっぱいなのに、
「あ……これじゃ入れられない」
ということに気がついて、恥ずかしかったり残念だったり、相手に申しわけなかったり。
私はセックスのたびにパニックを起こしていました。
彼氏もちょっと残念そうな顔するし……。
このままじゃ関係が悪くなっちゃうなあ、なんて気を遣っていたんですよ。
今、書いていて気がついたのですが、相手のことをあまり異性として意識しなくなると、何でも言えるんですが、
「素敵な人だわ」
と思っていると、何にも言えないんですよね、自分は。
逆に言うと、恋の気分が高まっているときは何でも自分が我慢すればいいやと思っていて、そんなムードも冷えてくると、
「あのね、実は痛いんだよね」
「ローション使ってくれないとつらいんだよね」
とか、何でも言えるようになっちゃう。
なんにも我慢しなくなっちゃう。
この時も、ちょうど50歳から付き合いはじめた人だったので、恋のムード満開でしたから、私は「痛い」と言わずに我慢していました。
そのうちに、あることに気がついたんです。
私の場合は入り口付近が濡れていないだけで、奥は割とちゃんと濡れていて、
「意外と仕事できそうじゃん?」な感じだってことに!
これって、奥から順に濡れてくるものだからなのか、部位によって別の液が出ているからなのか定かではないのですが、彼氏は喜んじゃったわけです。
いや、正直私のほうがもっとうれしかった、更年期卒業か?なんて思っちゃって、バカですね~。
「な~んだ、濡れにくいとか言って、ちゃんと濡れてるじゃん♪」
うれしそうな彼氏を見ていると、私もはしゃいじゃって、バカですね~、
「やだもう♪ 言わないで~」
なんて恥ずかしそうにつぶやいてみたりしていたんですが、これが大きな間違いの元でした。
彼氏もそれなら思いっきり入れちゃうぞ的な感じでガンガン入れるようになっちゃった。
男の人って、加速つけて勢いよく出し入れすると、精神的に「俺スゴイ」って満足感あるんですかね。
挿入暴走族な俺、カッコいいって思っちゃうんですかね。
そういうムードも大切ですが……
濡れ足りていないところに、勢いよく突っ込んだらどうなるか?
膣の粘膜がケガするわけです。
セックスはちゃんとできるのですが、数日後に膣の匂いが変わり、変な液でジトッとしてきました。
そうです、膣炎にかかってしまったのです。
そのたびに病院に行く、薬をもらう、の繰り返し。
セックスのたび、パンツを下した瞬間に、膣炎にかかったことを思い出して、
「あっ、そう言えばこないだした後にね……」
と話そうとするのですが、挿入暴走族の人はそんなの聞こえてなくて、「あっそフーン」でズコーンと入れちゃう。
「痛い~」
といちおう申告はするのですが、挿入暴走族の人はお決まりのセリフ、
「嘘つけ、中は濡れてるじゃん」
で応酬して、このセリフで興奮して挿入大集会に突入し、私も忘れちゃう、大集会だから。
で、また翌日病院へ……。
更年期になって膣の潤いが不足するということは、膣の中でさまざまな雑菌を退治し、膣内を良い環境に保ってくれていた常在菌が不足するということでもあります。
濡れにくい、濡れやすい、という目に見える問題だけではないわけです。
若い頃なら翌日には治っていた膣のヒリヒリが、何日経っても治らないということが起きます。
セックスを楽しみたいという気持ちには個人差があります。
私はその気持ちが強いほうですが、それほどでもないわ、という人の場合、こんなことが一度あっただけで、
「もうセックスはこりごり」
と、セックスを避けるようになりますよね。
その結果、膣が硬化して萎縮し、膣そのものが退化してしまいます。
これが、「②長期間、性交をしなかったために廃用萎縮が起こっている」という問題です。
このお話、次回に続きます。