女性特有の健康問題に関する提言

 2017年1月 神田つばき

 

 

「一億総活躍社会」はすでに幕を開けています。一部の優れて能力のある人だけが活躍する社会ではなく、体の弱い人、高齢の人、これまで職業に就けなかった人にもチャンスが与えられなければ、それは実現できません。特に女性、そして高齢者が働ける環境づくりが急務となっています。

仕事をすることで、知らなかった自分の能力を発見し、人から感謝され喜ばれる―それは大きな幸福感をもたらしてくれます。しかし、そのためには女性特有の健康上の問題をクリアしなければなりません。例えば企業で責任あるポストに就く40代~50代は女性の更年期とぴったり重なります。更年期障害で体調を崩し、せっかくのポストを辞退する女性は少なくないのです。 

また、更年期障害の症状は200以上あると言われており、自分が更年期障害だとは気づかないまま、内科・外科から心療内科まで、あらゆる科を次々とドクターショッピングすることになります。さまざまな科を受診しても不調が治らないため、自信と意欲を喪失してしまいます。症状が改善しないまま、複数科受診を重ねることによる無駄な検査費用だけでも年間434億円に上るという医療経済学者の試算も出ているのです。

「いったい自分は何の病気なのだろうか」「人より早く老化が始まっているのだろう。我慢するしかない」と苦しんでいる女性が、女性ホルモン量検査を受け、HRT(ホルモン補充療法)を受けて症状改善した例がたくさんあります。しかし、現実には各科から婦人科や更年期外来への受診を勧められた更年期女性は14%のみだそうです(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会調査)。私は今こそ、自治体や企業の健康診断、人間ドックに女性ホルモン量の検査を組み入れることを提言いたします。

戦後、日本女性の平均寿命は30年以上も延びました。しかし、女性が持っている卵胞細胞の数は変わっていません。戦前までは閉経とほぼ同時に寿命を迎える女性がほとんどでしたが、現代を生きる私たちは閉経後に30年を超える時間を与えられているのです。この時間を健やかに活動できることは、一人一人の幸福はもちろん、社会全体の利益に大きく寄与します。

女性特有の健康問題は更年期障害だけではありません。月経前症候群や不妊など、病気ではないからと我慢している女性がたくさんいます。それは一個人にとっても社会にとっても深刻な損失です。女性ホルモン値検査は、今の貴女の健康状態を把握する第一歩です。すべての女性が、健康チェックの一環として女性ホルモン量検査を受けられるようになることを願ってやみません。