第1回 「そうか、更年期だったのか…。」
初出:ラブピースクラブ 2016年1月6日
まさか自分が更年期について書くなんて……。
そんな日が来るとは、若いころはもちろん、つい最近まで考えたこともありませんでした。
それどころか、
「更年期障害」だの「閉経」だの、そんな「女の戦力外通告」みたいなものが自分に訪れるなんてあり得ない!
と思っていたのです。
生まれてこの方「女」としてしか生きてきたことがないから、
「女を卒業した自分」なんて想像できないのです。
女の人の心には、生理や出産、女だからと耐えているいろんなことが、日々のしかかっています。
おめでたいはずの出産も、子供を産んだら産んだでホルモンのバランスの変動や、体の変化に必死でついていかなければいけない。
産まない選択をしたらしたで、「なぜ産まないのか、それとも産めないのか」と、失礼なことを言ってくる人もいる。
どっちもイヤだし、大変だし。
夫婦で決めたことであっても、実際に大変な思いをするのは女性であることが多いです。
「でも、それももうおしまいですよ~。排卵も月経もなくなりますから、女の苦労とはサヨナラです。お疲れ様でした~」
と言われても、戸惑いしか感じません。
女を解雇? 女を廃業? 何なの??? とにかく体調悪い……ってのが、ここ10年ほど続いているわけでして。
体の不調に堪えかねて、病院で女性ホルモン量を検査したあげく、「あなたの女性ホルモンは枯渇しています」と言われた人がいます。
その人はまだ30代後半でした。
若年性更年期障害と言われて、
「じゃあ明日から私はどうすればいいの?
女性ホルモンが枯渇したら私は男になっちゃうの?
それとも男でも女でもないものになって生きていくの?」
と、どうしても認めたくない気持ちになった、と言っていました。
その「認めたくない」気持ち、よくわかります。
「更年期」という言葉に、自分の大切な「女性」を否定されたように感じる人は少なくないのです。
今思うと私は、40代の後半にさしかかったころ、やたら体調を崩していました。
一日おきぐらいに頭痛を起こして鎮痛剤を飲んでいたし、今より10キロ以上太っていました。
家事にも仕事にもやる気がなく、特に出かける支度をしようとすると段取りが考えられなくなり、打合せに遅刻したり、ノーアイディアで赴くこともしばしば。
一瞬のイライラや落ち込みを切り上げることができず、一日中とらわれてしまうのです。
そして、朝起きたときの体のしびれとこわばり……
そのうち全身がマヒして、起き上がれなくなるんじゃないかと思いました。
これらの症状は、後から考えるとすべて更年期障害によるものだったようです。
「何かおかしいな」と思いながら、一つ一つの症状に関連性がないし、何よりもちょうど会社を作るので忙しかったし、専門学校1年と中学3年の子供を一人で育てていたので、お金も時間もいつも足りない!
落ち着いて自分の体と向き合う時間がなくて、更年期障害だと気づくことができなかったのです。
私がこういった症状から解放されたのは、50代に入ってからのことです。
52歳の時に母親が急死し、自分の健康について初めて真剣に考えました。
今の自分の年齢のときに、母はどんな外見で、どんな活動をしていたかな……
どんな食事をしていたかな……
どんなことを言っていたかな……
その結果を自分に照らし合わせて見てみると、母は私よりはずっと健康的な生活を送っていたことに気づきました。
毎日、だいたい決まった時間に寝起きし、食事を抜いたり、暴飲暴食することもありませんでした。
食事の代わりにビールでお腹をふくらましたり、無茶な徹夜をする私に、注意してくれたことは何度もありましたが、生涯反抗期な私はいちいち言い返して、何一つ言うことを聞かなかったのです。
棺の中の73歳の母は白髪とはいえ髪も豊かで、肌に唇にもつやがありました。
いっぽうの私は……。
このままでは母よりずっと早く、外見も中身もおばあさんになってしまう……!
よく昔から、親の死と更年期障害は重なる、と言われていることを、思い出していました。
もしや、私の不調も更年期障害なのでは、とやっと気づいたのです。
遅ればせながら更年期について勉強し、病院で相談して、いろいろ検査・検討した上で、HRT(Hormone replacement therapy=女性ホルモン補充療法)を受けました。
症状のどれか一つでも、ほんの少しでもよくなればいいなあ、とすがるような気持ちで……。
2~3ヵ月かかったでしょうか、少しずつしびれや頭痛、鬱症状はなくなっていました。
突然よくなる感じではなく、「あれ、そう言えば?」という感じのよくなり方です。
春になって山の雪が溶けるように、ゆるやかに、そして一斉に消えていく感じでした。
HRTで快癒したということは、やっぱり更年期障害だったのね、と思った次第です。
私が知っていた更年期障害の症状は「めまい・のぼせ・ほてり」だけだったので、「私はちがう!」と思いこんでしまったんですね。
女性の更年期症状は200種類以上もあるのに、私はそのうちの3つしか知らなかったのです。
それで、整形外科に行ったり神経内科に行ったり、ドクターショッピングをしましたが、スッキリよくなるということがありませんでした。
肝心の女性ホルモン量の減少に関して、何の対策もしていなかったからです。
最初に不調を感じた40代の時に、産婦人科で女性ホルモン量の検査を受けていれば……と、実はものすごく後悔しています。
仕事でも家庭でも大きな責任がのしかかってくるこの時期、体と心の不調はさまざまな損失を残してしまいました。
皆さんはどうか、私のような後悔を残さないでほしいな、と心から思います。
これから更年期を迎える人……
いま更年期のただ中にいる人……
もしかしたら更年期!?と人知れず悩んでいる人……
そんな女性の皆さんに、私と同じ失敗はしないでほしい、と願ってこのコラムを書いていきます。